テーマ1 英語の授業&日米の学校の違い

ベンさん

英語はコミュニケーションのためのツール。自然のコミュニケーションとして、間違っても話していく。最初から完璧は無理、間違いをすることが大事。

沼田先生
マスターしたら海外へ行って・・・というのは逆。英語の上達は、必要な状況でこそマスターできるもので、日本人同士が、英語を学び合うのは、あまり意味がない。お互い何を言いたいのかわかってしまう。

ベンさん
100%理解してから行動に入るというのは、もったいない。失敗のおかげでたくさんの学びだけでなく、チャンスにもつながった。外国人が日本で漫画家をやるというのは、マンガ好きの外国人にとっては夢だけれど、とても大変。日本的な文化の違いにおける失敗が、そのままネタとなって、本を出版できる機会まで得られた。日本には、「七転び八起き」という言葉に代表される文化がある。「日本人は~だから」とか、「統計的には~だから」というレッテルに惑わされてはいけない。それは正しいとは限らない。

沼田先生
失敗もおいしいことがある。アメリカ留学時、自分の失敗が相手にはジョークになって、それが受けるとわかって使い続けた。失敗しても、そこでやめたら失敗のまま終わってしまう。その失敗を分析して続けていくと、糧になるし、いずれは成功することも。やめては行けない。失敗したら、すぐやめちゃう日本人がとても多いと思う。また、日本ではいつもできない理由を探している人が多い。とくにこの業界(先生方)の人は大得意。工夫したらどこかに突破口があるのだから、まずはできる理由を探して行動しては!

ベンさん
今回のアンケートを見ると、心配と罪悪感にあふれている。私はみなさんに「大丈夫です」と言いたい。やるかやらないか自分で決めて、行動すればよい。できないことだってある。受験の偏差値を挙げなければならないのに、自然の英語を教えるなんてできない。何をするのか、何をしないのか、やることとやらないことをしっかり自分で決めること。教育は、学生自ら知識を身につけるところであり、彼らが自ら掴むところ。先生が教え込むところではない。無理なことは無理、それで良いと思う。

沼田先生
 ビジネス用語にKPI(Key performance Indicator)という言葉があるが、先生はKPIを先生方の頑張りにおいている。しかし、学校においては子どもの学びがKPIであり、たとえば自分が出張でいなくても(子どもたちが)ちゃんとやっていれば、それはその先生の功績となる。子どもの中には、授業をやりたい子がいる。その子は勉強してきているので、自発的にどんどん動く。子どもたちの主体的な学びはこうしてさらに促進されていく。先生方は、朝から夜まで、すごく頑張って、頑張りすぎている。
働き方改革というが、早く帰ることが働き方改革ではない。授業のために現在やっていることが本当に必要なことなのか。自分ができないこと、できること、これらを自分でわかるようになると楽になる。さらに、できない部分は外注に出して他の人にお願いするとか、有用なアプリを使ってどこからでもメモを取れたりできる環境にするなど、ツールの活用がポイント。何が苦手か、得意か、見極めること。
アメリカ人はその点はっきりしている。日本人はカラオケで歌いたくない人でも、ずっと歌わないということは案外できない。しかしアメリカ人は歌いたい人が歌う。歌いたくない人は歌わない。ただ、自分のスケジュールを人に管理させるのはおすすめしない。他人に委ねるといっぱい入れられて、プライベートの時間がなくなってしまう。

ベンさん
数学的な言葉で、regression toward the mean(平均回帰性)という言葉がある。アメリカのウォーレン・バフェットも言っていることで、平均へ戻る現象のこと。周りにあわせていると、自分の行動や意味合いは平均的になっていくということ。しかし本当にそれで良いのか。英語の勉強でも、自分の仕事でも、自分がこれをやったら周りにどう思われるか、を考えると、平均的になる。世論で日本の英語力はよくない、日本人は働きすぎ、と言われている。もし、自分の周りもそういう環境であるなら、それで満足なのか、考えてみてほしい。

沼田先生
これからの世の中では、英語はあまり意味がない。2020年で英語が小学校に導入される頃には、グーグル先生とポケトークが席巻する。言葉自体はもはやいらない。
アメリカの学校では、いろいろな分野で得意な子がはっきりしている。しかし日本はオールマイティな子供を育てるのが好き。またアメリカ人と日本人のリアクションの違い。こういう文化的な違い、彼らがどうしてこのように考えるか、それを知ったほうがよい。
国連で仕事をするような一部の人は英語を話せたほうがよいと思う。しかし中学校ではみんなが英語を使う仕事をしようとするわけではない。それより、言葉を学ぶことを通じて、世界の文化や、こだわり、些細な文化の違いを学ぶことがよいと思う。

ベンさん
自分のやり方しかない。周りのやり方を気にしてもやるのは自分、助けにはならない。皆さんの一人ひとりの長所や特徴は他の人に通じない可能性が高い。いい教え方は人それぞれ違う。生徒に対してもそれぞれ違う。あまり考えすぎないことをすすめる。
もっと根本的なことは自分を管理すること。自分の健康を大切にすること。日本の企業のKPIは、Facetimeと言われている。課長や上司に自分の顔を見られる時間がながければ成績があがる。アメリカではそれはバカバカしい。結果がすべてだから。学校は先生のためのところではない、生徒のためのところである。生徒が学んでいるか、生徒が楽しいか、先生がいなくても生徒なりに成長していれば、それはいいと思う。自分の経験では、自ら学び取っていた。自分は学生の時、日本語の授業を作ったが、それはゲームをやりたかったから。必要だったから。
教えることは大事だと思う。しかしもっと大事なことは、大人としての見本を見せること。指導という言葉は教えるということではない。導くこと。生徒は、先生について見本として見ている。朝の6時に来て、夜10時に帰る。それは見本として、いずれ生徒が繰り返したら、それは考えものだと思う。

沼田先生
アクティブ・ラーニングはもはや死語。ラーニング自体アクティブ。アクティブつける必要ない。文科省もやめた。先生が子どもたちのためにと思って実行したことが、案外子どもたちにとって全く違っていたりすることがある。この子たちは本当は何が好きなのかを探る力=それこそが教師にとってのKPI。自分が昔いいと思ったことを我々教師はしてしまうが、それは忘れよう!今の子ども達はすでに、生まれたときにスマホがあり、スマホがすごいとは思っていない!今のデジタル社会が当たり前、ワイヤレスで電話していても、おかしいとは思っていない。時代は変わっていることに気づけば、いいものが出せるかと思う。

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テーマ2 子どもたちが主体的に取り組む授業、自己肯定感・自己効力感

沼田先生
まず、自己効力感は、今後できると思えるか、という結果予期と効力予期のこと。自己肯定感とは、これまでの仕事などについてどう評価できるか、と考える。簡単に言えば、自己効力感がある人は、終電に乗るために走る人。「私が走れば間に合う!」私が行動に起こせば、やれるんじゃないか?!実は、みんな毎日そういうことを経験している。その自信をもっていくこと。日々、自己効力感は積み重ねていける。それを育てるものは4つあって、

1 自分がやって成功した体験から

2 代理体験、他の人がやっているのを見た、本を読んで見て

3 言語的説得、これ、できるよ!!といわれて

4 情緒的高揚感、ゲレンデマジック。

→できる気がする!!「私、やったら、できるかも!」、毎日育てられる。ただ、日本人は自己効力感が少ないのではない。あるけれど、出せない。なかなか自分を褒められないが、アメリカ人は自分で自分を評価する。

ベンさん
一番、効果的なのは、考えすぎないこと。政府が「新しいことをやってるよ!」と見せて予算をつけようとしているが、やっている活動は、前のことを英国で新しく名前をつけているだけで、レボリューションは皆無。
「ワクワクドキドキワークショップ」で「Show & Tell」というのを子どもたちとこの二日間やってみた。自分の好きなことを発表するというもので、日本の学校ではやっていない。そこで面白い現象をみかける。生徒たちに、『なにを書いてもいい、好きなことを発表していい、なんでもいいから好きなことを話してご覧』というと、できない子はいなかった。すなわち、そういう環境を用意すれば、みんなやれるということ。主体的なことを促すのはとても簡単。逆に困っているのは、大人の方。大人たちは、見本がうまくない、質問や発表の機会をいかに公平に与えられるか、を一生懸命悩んでいた。このテーマの「主体的」という言葉を使うこと自体、不思議。なぜなら、主体的でない授業が前提にある。本当に学びたくない人間に会ったことはない。それぞれ勉強のやり方や表現の仕方などが違うだけ。だから促すだけでよいのでは。

沼田先生
残念ながら、そうとも言い切れない。アメリカと日本は違う。日本は、教育の中でやらせているところもある。だからこそ識字率ははほぼ100%だが、アメリカはもう少し低い。しかし、アメリカとの人口比からすれば、日本はもっと多くのメダリストやエリートが出てもおかしくないが、そうはなっていない。すなわち、アメリカはエリート教育が上手、大事にしている。だから、やりたい人が来る、伸ばせる、良い成果が得られる。
一方でスポットライトのあたらない、大変な状況の人もいるが、その人数が圧倒的に日本は少ない。先生方が嫌われながらも、子どもたちにやらせているからこそというところもある。しかし、エリートはエリートで育てていかないといけない。

ベンさん
日本でも格差社会が強まっているが、アメリカに比べるといい方。日本の教育について、なにかるとすれば、それはすべての教育制度ではなく、エリートの教育に対してだけではないか。普通の方はいい方。困難な家庭の子がいてもちゃんと教育を受けられている。しかしアメリカは落ちちゃう子がいっぱいいる。日本の教育は誇るべき。
よく、日本の英語教育がだめ、自己表現を頑張らないと、このような国際社会では。。という話は、殆どの生徒は関係ない、みんなが国連に務めるわけではない。ただエリートの大。もし、制度全体の目的がみんなを同じ目的に持っていくことだったら、それでよい。日本で言う「出る杭は打たれる」の反対に、アメリカには、「The squeaky wheel gets the grease.」(キイキイいう車輪は油を得られる)という言葉がある。これがほしい、と主張しなければ資源はもらえない。やる気がない人にはもらえない。 たしかに、みんなの共通の知識の基盤を作る、それも価値がある。

沼田先生
アメリカの教育と日本の教育。どっちがいいとか悪いとかではない、良い点悪い点を知ることが大事。価値を認めているかどうか。よくしっかり理解すること。向こうの良いところを取り入れるということは、アメリカの悪いところも取り入れることになる。

ベンさん
私はお寺の修行道場で通っていたが、伝統的なやり方でやっているとみんなが思っていたが、実はそれは違っていた。時代によって、座禅のときの棒の叩き方も違っていた。ところが、それは戦後、帰還した軍人がその修行だけでは物足りないといって新しいやり方として、どんどん強く叩き始めたということだった。すなわち昔はこうだった、ということも、実際には本当ではなかったという話はよくある。またアメリカはこうですよ、といっても本当のアメリカ人がどう思っているか、アメリカはどんなところか言ってみないとわからない。良い話を聞いて真似るのも大事だけれど、根本的なことは実際やる、実際に見る、実際にて確かめる必要がある。「The map is not the territory.」 (地図は領土ではない)、とのことわざもあるとおり。自分の行動が囲まれている一般論や常識は、実は現実に基づいているものとは限らない。なにをするか、どうなのか確かめるのは自分自身しかない。

沼田先生
実際にやってみないとわからない。やってみることが大事。もう一つは、自分の特性とはなんだろうということをしっかり見極めて、これならできるかな、ということを判断することではないか。たとえばアメリカのやり方が素晴らしいと言っても、その人のキャラクターに合っているかはわからない。自分のキャラクターのほうが大事。すなわち、自分のことをよく分かること。

ベンさん
自分の特性と他人が見る自分、自分は相違点がたくさんある。自分は日本語上手、と言われるが、そうは思っていない。こうして話しながら、発音間違えたな、文法間違えたな、と思いながら話している。

沼田先生
まず一回やってみることが大事。

ベンさん
今回のワークショップも一昨日、昨日と2回やっても、やっぱり緊張している。でもやらないよりやったほうがまし。何でもやってみることが大切。

沼田先生
一回やって、周りの反応を見て、それを続けていくかどうかを決めればよい。自分はアメリカで甚平を着ていた。楽だから着ていた。でも周りは伝統衣装だといって、興味を持ってくれた。これは着るしかない、と思って着続けていた。
漢字テストの丸付けを自分でやるのをやめた。ライセンスを持っている子どもたちにやらせた。当然、親からは「なんで子供に丸付けをさせるのか」という反応がきた。しかし丸付けはさせるが、最終チェックは自分がやる、成績に反映させるのは自分だと、説明して続けたところ、子供の成績がぐんぐんあがっていった。なぜか、ライセンスを選抜試験。みんなが丸付けをしたいからライセンスを取りたがる。子供の採点のほうが、自分より上手。興味を持って学べている。一石二鳥どころではない。一回やって、親がえーっという反応があるが、それで成果が出てくれば続ければよい。
学級通信もツイッターを使用。アカウントを作って、鍵をかけて、一ヶ月だけやらせてください、その中で問題があればすぐ辞める覚悟なので、とお願いした。4月を過ぎて5月になると、みんなすでに中毒。毎日、ちょこちょこ写真だけを上げていっていたが、なくてはならないものになった。
それもまずやってみて、周りがそれを評価して、使えると思ったら続ける。でもやってみて、使えないと思ったら即やめる。学校ではネットやUSBが危ないと言って使用できない環境もある。しかし危ないと言っている校長自体がクラウドについて理解していない。できない理由を並べて、やらないのではなく、試してみるほうがよい。

ベンさん
外国人がマンガについて言ってくれるのは、外国人の目から日本を再発見することができる、と言うが、かっこいいと思うことはない。良さを再発見したのではない。もともと好きだっただけ。自ら行動して自ら結果を試せればよい。できない理由、恐怖、パスワード等々意味ない。プライバシーを心配するが、グーグルを使用している時点で全部知れてしまっている。
関心のあるところに行けば、なにか出てくる。自分は暇なときは宿題を無視してアニメばかり見ていた。10年後、その現実を認めた、私は引きこもりのオタクだった。 そのおかげで日本の出版社と話したとき、本の企画が持ち上がった。将来のビジネス業界にどんな需要が出るかはだれにもわからない。どれが仕事になるかわからない。

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まとめとして

沼田先生
これからの時代、ぜんぜん激動じゃない。新しいものが出て変化が起こっていく。それは、突然起こるのではなく、いつも変わっていくのだから、過去の経験は使えない。AIが出てきて、人間はどうしたらよいか、しかし、AIは過去、未来を創るのは人間。AIは恐れるに足らず。将来なんとかなる。みんなが未来を作っていけばよい。戦後を知っていて、振り返ってみたら、激動だった。しかし、毎日の中では、誰も激動とは思っていない。毎日、やってみてやればよい。やり続けることを楽しく生きていけるのではないか。死ぬまで生きていかなきゃいけないのだから、楽しく生きていけば良い。。

ベンさん
私は一言、「どうぞご自愛ください」と。みなさんの質問を読んでいると、心配していること、生徒さんのために頑張りたいと思っていることがわかる。それは素晴らしい。大事にしながら、生徒さん一人ひとりをよく注目してほしい。自分なりにやってみてほしい。ただ、むしろ頑張りすぎないこと、自分の体調を気にすること。生徒さんの体と同じだけ、そうしてほしい。

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質問1
アクティブ・ラーニング当たり前という中にあって、まだ「静かにして聞きましょう」と言う一方、自由発言を求めているが、それについてどう考えるか。

沼田先生
担任がよく前に立って、「静かにするまで30秒かかりました」という先生がいる。それってとても可愛そう!!今までは聞く姿勢を育てていた。話を聞く、ということが教室で当たり前だったから。しかし本来であれば、聞く意欲を育てなければならない。「話を聞きなさい」と言っている先生の話は正直つまらない。大人でも、こういうセミナーで眠くて寝ちゃうのは、自分の話がつまらないから。だからどうやったら、寝ないでいてもらえるか、を考えるのは同じこと。面白いなら寝ない。子どもたちの聞く意欲をどう育てるか、興味深い話をしてあげられているか。

ベンさん
ルールで許される範囲であれば、自分にとってよくないことはするべきではない。自分に合わないと思ったら立つ、本当は動いちゃいけないという理由だってない。自由にできる。日本人でもスピーカーと触れ合うというのはできると思う。先生には、生徒たちの前で授業を指導、誘導する力がある。可能性は無限。まずはやってみて、成功したら続ける、失敗したら忘れる。

質問2
失敗は美味しい、というのはおとなになってから思えること。とくにこどもは大人の目を気にする。失敗しても良いと子どもたちに感じさせたいが、どうしたらよいか。

沼田先生
自分は、子どもたちに失敗していい、ということは言っていない。失敗するな、といっている。プロセスが大事と言われているが、結果を求めずプロセスが大事と言っているのは、おかしいと感じる。結果を求めないなら、やらなければいい。それではモチベーションは望めない。最初から結果を求めずプロセスばっかり求めている人の失敗は認めない。結果を求めた結果のプロセスならば認める。

ベンさん
目的が大事、何が目的か、定義付けること。たとえば英会話について。英会話を上達したい、といっても、上達のための上達はたいてい無意味。何かをできるようにしたいから、行動する。英語を上達したい、すなわち英語で何がしたいのか。通じるように?ではない。本当の目的は、たとえば英語を使って、仕事場で外国人のお客さんと接するようにしたい。それならば、ひたすらよく使う語彙と表現を練習する。文法はやらない、求めていないからいいんです。それで十分使えて、仕事ができる。上達だけの勉強はきりがないし、永遠の劣等感しか生まれない。

アメリカ大使館より
教材・・・セサミストリートが教材を作っている。授業で取り入れたいということがあればご相談ください